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高次元の生物学的データの構造と遷移を視覚化する

Nature Biotechnology 37, 12 doi: 10.1038/s41587-019-0336-3

ハイスループットな技術で得られた高次元データには、データの構造とパターンを直感的に理解可能な形で表す視覚化ツールが必要である。本論文では、データ点間の情報幾何学的距離を用いて局所および全体の非線形的構造を同時に捉える視覚化法PHATEを紹介する。種々の人工データセットと生物学的データセットでPHATEを他のツールと比較したところ、PHATEでは連続的進行や枝、クラスターなどデータのさまざまなパターンが一貫して保存されており、他のツールよりも優れていることが明らかになった。我々は、DEMaP(denoised embedding manifold preservation)という多様体保存基準を定め、PHATEで得られる低次元埋め込みでは既存の視覚化法と比較してノイズが定量的に多く除去されていることを示した。ヒトの胚葉分化に関する新たに得られた単一細胞RNA塩基配列解読データセットの解析では、これまで知られていなかった3つの亜集団の発見など、発生の主要な枝に関する特別な生物学的知見をPHATEが明らかにすることが示された。さらに、PHATEはマスサイトメトリー、単一細胞RNA塩基配列解読、Hi-Cと腸内マイクロバイオームデータなど、さまざまな種類のデータに応用可能であることも示された。

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