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注射可能な骨髄様の足場が造血幹細胞移植後のT細胞免疫を強化する
Nature Biotechnology 37, 3 doi: 10.1038/s41587-019-0017-2
同種異系の造血幹細胞移植(HSCT)はさまざまな疾患の治癒につながる治療法であるが、T細胞の欠乏および調節異常がその有用性を制限している。本論文では、骨髄内のT細胞リンパ球生成の特徴を模倣する生体材料足場を紹介する。この骨髄クライオゲル(BMC)は、骨形成タンパク質2を放出して間質細胞を動員し、NotchリガンドであるDLL-4(Delta-like ligand-4)を提示してマウスおよびヒトの造血前駆細胞のT細胞系列への細胞運命の指定を促進する。HSCT時にマウスに皮下注射したBMCは、T前駆細胞の胸腺への播種、T細胞の新生、およびT細胞受容体レパートリーの多様化を増強した。末梢T細胞の再構成は、マウスのHSCTでは約6倍に、ヒトの異種HSCTでは約2倍に強化された。またBMCは、同種異系HSCT後のドナーCD4+制御性T細胞の生成を促進し、生存率を改善した。T前駆細胞の養子移入と比較して、BMCはドナーキメリズム、T細胞生成、およびワクチン接種に対する抗原特異的なT細胞の応答を強化した。BMCは、HSCT でのT細胞再生を促進して移植片対宿主病を軽減する汎用的な方法となる可能性がある。