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腸内微生物地理学の空間メタゲノム特性評価
Nature Biotechnology 37, 8 doi: 10.1038/s41587-019-0183-2
自然生態系の維持には空間的構造の形成が重要である。腸内マイクロバイオームをはじめとする多くの微生物群集は、空間的構成が複雑である。細菌を生物地理学的にマッピングすれば群集機能の背後にある相互作用を明らかにすることができるが、既存の方法は、自然のマイクロバイオームにみられる数百種もの微生物をカバーすることができない。本論文で紹介するMaPS-seq(metagenomic plot sampling by sequencing)は、マイクロバイオームの空間的構成の特徴を培養によらずにマイクロメートル単位の分解能で明らかにする方法である。マイクロバイオーム試料は未処理でゲル基質に固定し、凍結破砕して粒子状にする。粒子内で近接する微生物分類群は、液滴封入、バーコード16S rRNA増幅、および高性能塩基配列解読によって同定される。マウス腸の3カ所を分析したところ、特定の分類群の間で正および負の相互関連性を示す不均一な微生物分布が明らかになった。腸の全区画でバクテロイデス分類群間の強固な関連性が見いだされ、系統学的にクラスター化される局所的細菌領域が食物の変動と関連していることが明らかになった。空間メタゲノミクスは、複雑な生息環境の微生物地理学研究に利用可能と考えられる。