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中枢神経系全体の遺伝子発現を強力かつ持続的に調節する二価siRNA化学骨格
Nature Biotechnology 37, 8 doi: 10.1038/s41587-019-0205-0
低分子干渉RNA(siRNA)で脳全体の遺伝子発現を持続的にサイレンシングすることは、これまで実現されていない。本論文では、脳脊髄液への単回注入によってマウスおよび非ヒト霊長類の中枢神経系(CNS)での強力で持続的な遺伝子サイレンシングを維持するsiRNA構造「di-siRNA」について述べる。di-siRNAは、ホスホロチオエートを有する2本の完全化学修飾siRNAをリンカーで連結したものである。マウスでは、ハンチントン病の原因遺伝子ハンチンチンの強力なサイレンシングを誘導し、脳全体でメッセンジャーRNAおよびタンパク質を減少させた。遺伝子サイレンシングは6カ月以上持続し、遺伝子サイレンシングの程度はガイド鎖の組織内蓄積レベルと相関していた。カニクイザルにdi-siRNAをボーラス注射すると、脳全体に大きく広がって強力なサイレンシングを示したが、毒性は認められず、オフターゲット効果も最小限であった。このsiRNAデザインにより、神経疾患の治療を目的としたRNA干渉によるCNSの遺伝子サイレンシングが実現される可能性がある。