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細胞内トリアシルグリセロールの利用によるStreptomycesのポリケチド力価の向上
Nature Biotechnology 38, 1 doi: 10.1038/s41587-019-0335-4
治療薬として重要なアベルメクチンなどのポリケチドは、発酵槽中でのStreptomyces種の増殖で定常期に二次代謝物として生産されることが多い。ポリケチド生合成に投入される細胞内代謝物の供給源は明らかになっていない。我々は、一次代謝で蓄積する細胞内トリアシルグリセロール(TAG)が定常期に分解されることを、マルチオミクスによって明らかにした。その過程は、細胞内TAGと細胞外基質の両方からの炭素フラックスをポリケチド生合成へ振り向けると考えられる。我々は、TAGのプールを動員してポリケチド生合成量を増加させるddTAG(dynamic degradation of TAG;TAGの動的分解)という方法を考案した。ddTAGにより、Streptomyces coelicolor、Streptomyces venezuelae、Streptomyces rimosus、およびStreptomyces avermitilisのアクチノロージン、ジャドマイシンB、オキシテトラサイクリンおよびアベルメクチンB1aの力価が上昇した。アベルメクチンB1aの力価はddTAGによって工業規模の180m3培養で50%上昇し、これまでの報告例で最高の9.31 g/Lとなった。この方法は薬剤製造用のポリケチドの力価を高めると考えられる。