Article
ヒト長期造血幹細胞の効率的な遺伝子編集がクローン追跡で検証された
Nature Biotechnology 38, 11 doi: 10.1038/s41587-020-0551-y
造血幹細胞(HSC)の標的化遺伝子編集が治療法として有望な疾患は複数存在する。しかし、HSCでは相同組換え修復(HDR)の効率が低く、またその処置がクローンの構成と移植の動態に及ぼす影響が不明であるため、臨床応用は進んでいない。今回我々は、編集された細胞のクローン追跡にバーコーディング戦略(BAR-Seq)を利用して、編集によってp53が活性化され、移植された編集済みクローンでは多系統分化能と自己複製能が維持されるが、ヘマトキメラマウスではHSCのクローンのレパートリーを大幅に縮小させることを示す。p53を一時的に阻害すると、移植片のポリクローン構成は回復した。細胞周期制御因子E2Fを標的遺伝子に動員するアデノウイルス5型E4orf6/7タンパク質を一時的に発現させて細胞周期の強制進行とHDR装置の構成要素の上方制御を行うと、HDRの効率は上昇した。E4orf6/7の発現とp53の阻害を組み合わせることにより、長期ヒト移植片のHDR編集効率は最高50%に達し、編集されたHSCの再増殖と自己複製に乱れは認められなかった。この強化されたプロトコルは、HSCの遺伝子編集の応用範囲を広げ、臨床応用への道を開くものと考えられる。