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APOBEC–Cas9によるイネおよびコムギの正確で予測可能な多塩基欠失
Nature Biotechnology 38, 12 doi: 10.1038/s41587-020-0566-4
CRISPR–Casエディターは植物ゲノムに短い挿入や欠失を生じさせることができるが、特定の標的部位に大きな欠失を確実に生じさせるのは実現困難であることが示されている。今回我々は、ヒトAPOBEC3A(A3A)、ウラシルDNAグルコシダーゼ、および脱プリンまたは脱ピリミジン部位リアーゼ(APリアーゼ)をCas9と組み合わせた一連のAPOBEC–Cas9融合体誘導性欠失システム(AFID)を開発したことを報告する。イネとコムギでは、AFID-3が5′側の脱アミノ化C塩基からCas9切断部位までの欠失を生じた。AFID-3によって生じた欠失の約3分の1(イネとコムギのプロトプラストで30.2%、再生植物体で34.8%)は予測可能なものであった。AFID-3のA3Aを切断型APOBEC3B(A3Bctd)で置換したeAFID-3は、選好するTCモチーフから二本鎖切断までに生じる欠失の均一性に優れることが明らかになった。AFIDは、作物の改良を目的とする調節領域やタンパク質ドメインの研究に応用可能と考えられる。