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動的なモデル化によってRNA速度を過渡的な細胞状態にまで一般化する

Nature Biotechnology 38, 12 doi: 10.1038/s41587-020-0591-3

RNA速度(RNA velocity)は、単一細胞RNA塩基配列解読データから細胞の分化を研究する新たな方法を切り開いた。RNA速度とは、任意の時点における個別の遺伝子の発現変化の速度を、スプライシングを受けたメッセンジャーRNA(mRNA)とスプライシングを受けていないmRNAの比に基づいて記述するものである。しかし、共通のスプライシング速度や定常状態のmRNAレベルでの完全なスプライシング動態の観察という中心的な仮定が覆されると、速度の推定値に誤りが生じる。本論文では、スプライシング速度論の完全な転写動態を、尤度に基づく動態モデルを用いて明らかにすることでこうした制限を克服する、scVeloという方法について示す。scVeloは、RNA速度を、発生や摂動への応答でよく見られる過渡的な細胞状態を有する系に一般化する。我々はscVeloを適用することで、神経発生と膵内分泌系発生で亜集団の速度論を明らかにした。我々はまた、転写、スプライシング、分解の遺伝子特異的な速度を推定し、各細胞の基本的な分化過程における位置を回復させて、ドライバーと推定される遺伝子を検出した。scVeloは、細胞系譜決定や遺伝子調節の研究を促進すると考えられる。

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