Letter
サーマルシフトプロファイリングによる組織と全血の薬物標的分子の発見
Nature Biotechnology 38, 3 doi: 10.1038/s41587-019-0388-4
細胞サーマルシフトアッセイ(CETSA)などの方法による薬物標的相互作用のモニタリングは、単純な細胞系に関しては確立されているが、in vivoでは課題が残されている。本論文では、組織サーマルプロテオームプロファイリング(組織TPP)を紹介する。これは、定量的質量分析法を用いてタンパク質熱安定性の変化を検出することにより、薬物を投与した動物の組織試料中のタンパク質と低分子薬との結合を測定するものである。組織特異的な全プロテオーム熱安定性マップが明らかになり、ラット肝臓、肺、腎臓および脾臓における非共有結合性ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤パノビノスタットの標的プロファイルおよびマウス精巣におけるB-Raf阻害剤ベムラフェニブの標的プロファイルが得られた。また、血液CETSAおよび血液TPPを考案し、それを用いてパノビノスタットおよびBETファミリー阻害物質JQ1の標的およびオフターゲットの関与を直接全血中で測定した。パノビノスタットは既知の標的分子との結合が血液TPP分析で確認され、ジンクフィンガー転写因子ZNF512の熱安定性も示された。これらの方法はin vivoでの薬物の作用を解明するのに有用と考えられる。