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マイクロアレイによる空間トランスクリプトミクスと単一細胞RNA塩基配列解読法の統合が膵管腺がんの組織構造を明らかにする
Nature Biotechnology 38, 3 doi: 10.1038/s41587-019-0392-8
単一細胞RNA塩基配列解読法(scRNA-seq)は、組織内の細胞集団の系統的な識別を可能にするが、その空間的構成を明らかにすることは依然として困難である。我々は、それぞれが複数の近隣細胞のトランスクリプトームをとらえるスポット群を用いて遺伝子発現の空間的パターンを明らかにするマイクロアレイ空間トランスクリプトミクス法を、同じ検体から得たscRNA-Seqと組み合わせた。異なる組織領域の正確な細胞組成のアノテーションを行うため、マルチモーダル共通集合解析法を導入した。マルチモーダル共通集合解析を膵臓の原発腫瘍に用いることにより、膵管細胞、マクロファージ、樹状細胞およびがん細胞の亜集団が空間的に限定された部分に集積していることが分かった他、別の細胞型との異なる共集積も見いだされた。さらに、炎症性繊維芽細胞とストレス応答遺伝子モジュールを発現するがん細胞との共局在も明らかになった。scRNA-seqで明確になった亜集団の構造をマッピングする我々の方法は、複雑な組織に固有の相互作用の解明に応用可能である。