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細胞骨格を標的としてヒト多能性幹細胞の膵臓分化を導く

Nature Biotechnology 38, 4 doi: 10.1038/s41587-020-0430-6

ヒト多能性幹細胞(hPSC)からの膵臓β細胞の作製は、糖尿病の細胞補充療法として有望である。本研究では、アクチン細胞骨格の状態と、膵臓細胞系譜の指定を行わせる膵臓転写因子の発現との関係を確認した。バルクおよび単一細胞のRNA塩基配列解読により、アクチンの重合度の相違が細胞をさまざまな内胚葉細胞系譜へ偏向させること、および重合した細胞骨格に有利な条件がニューロゲニン3誘導性の内分泌細胞分化を強力に阻害することが実証された。我々は、ラトランクリンAを用いて内分泌細胞への誘導時に細胞骨格を脱重合させることにより、in vitroおよびin vivoの機能が改善されたヒト多能性幹細胞由来β細胞(SC-β細胞)を得るための二次元分化プロトコールを開発した。4株のhPSCから分化したSC-β細胞は、第1相および第2相の動的なグルコース刺激性インスリン分泌を示した。その細胞の膵島サイズの凝集体を移植すると、マウスの既存の重度糖尿病がヒト膵島の場合に近い速度で急速に改善され、9カ月以上にわたって正常血糖が維持された。

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