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線虫の共生細菌を操作してウエスタンコーンルートワームに対する生物的防除能を向上させる
Nature Biotechnology 38, 5 doi: 10.1038/s41587-020-0419-1
ウエスタンコーンルートワーム(WCR)は、世界中でトウモロコシの作柄に大きな打撃を与えている。この害虫には、昆虫に病気を引き起こす共生細菌を保有する昆虫病原性線虫(EPN)による処置という防除法が考えられる。しかし、WCRの幼虫はトウモロコシが産生する二次代謝物ベンゾキサジノイドを横奪し、それを用いて線虫やその共生細菌に対する抵抗性を強化する。本論文では、ベンゾキサジノイド抵抗性の共生細菌を実験的に進化させて選択することにより、線虫と共生細菌のペアがWCRの幼虫を殺傷する能力が改善されたことを明らかにする。我々は、異なる線虫から5種類のPhotorhabdus属共生細菌を分離し、実験的進化によってベンゾキサジノイド抵抗性を強化した。ベンゾキサジノイド抵抗性は、アクアポリン様チャネル遺伝子aqpZの変異など、さまざまな機序によって進化した。ベンゾキサジノイド抵抗性のPhotorhabdus株を元のEPN宿主に再導入したところ、ベンゾキサジノイドを横奪するWCR幼虫を高効率で殺傷することができる1対の線虫・共生細菌ペアが見いだされた。今回の結果は、共生細菌の改変が農業害虫の生物的防除を改善する一般化可能な戦略となる可能性を示唆している。