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自然対合ヒトTCRαβレパートリーの超並列解析とマイニング
Nature Biotechnology 38, 5 doi: 10.1038/s41587-020-0438-y
抗原特異的なT細胞受容体(TCR)を発現するように改変したT細胞は、ウイルス感染やがんの強力な治療手段である。しかし、TCRの臨床候補の効率的な発見は、T細胞レパートリーのサイズや複雑さ、ならびに初代T細胞の取り扱いの問題によって困難となっている。本論文では、多様なヒトT細胞レパートリーから機能的結合活性が高いTCRを発見するハイスループットな方法を紹介する。この方式により、超並列マイクロ流体工学を用いて数百万個の初代T細胞から自然対合完全長TCRαβクローンのライブラリーが得られ、それをJurkat細胞で発現させた。TCRαβ–Jurkatライブラリーにより、ペプチド主要組織適合遺伝子複合体の結合と細胞の活性化を用いた抗原反応性TCRの反復的なスクリーニングとパニングが可能となった。6人の健常ドナーから自然対合TCRαβのクロノタイプが290万種類以上捕捉され、希少な(頻度0.001%未満)ウイルス抗原反応性TCRが発見された。黒色腫患者1例の腫瘍浸潤リンパ球試料のマイニングを行ったところ、腫瘍特異的なTCRが複数発見され、それらを初代T細胞で発現させると腫瘍細胞が殺傷された。