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ヒトマラリアを媒介するガンビエハマダラカの雄偏向性の性比歪曲遺伝子ドライブ
Nature Biotechnology 38, 9 doi: 10.1038/s41587-020-0508-1
マラリア、デング熱、ジカ熱などの疾患を伝播させるのは雌の昆虫だけであるため、昆虫の子の性比を偏らせる駆除法が以前から模索されている。性染色体ドライブなどの遺伝因子は、性比を偏らせることで最終的に崩壊に至る単性個体群を生じることができるが、基盤となる分子機構は不明である。本論文では、ヒトマラリアを媒介するガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)の雄偏向性の性比歪曲遺伝子ドライブ(sex-distorter gene drive;SDGD)を紹介する。我々は、X染色体を細断するI-PpoIヌクレアーゼに関して、doublesex(dsx)遺伝子の保存配列中に挿入されたCRISPR系遺伝子ドライブと組み合わせることにより、超メンデル遺伝の誘導を行った。波及動態のモデリングから、SDGDは雌の蚊の個体群に対し、雌の繁殖力を標的とする過去に開発された遺伝子ドライブ以上に迅速な影響を及ぼすことが予測された。dsx座位のSDGDは、当初の2.5%のアレル頻度から10~14世代で雄のみの個体群を生じて、個体群を崩壊させ、抵抗性の選択は見られなかった。今回の結果は、マラリア媒介虫の駆除にSDGDを用いることの有用性を支持している。