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健常組織と腫瘍組織における細胞の空間・表現型パターン形成をmLSR-3DとSTAPL-3Dで明らかにする
Nature Biotechnology 39, 10 doi: 10.1038/s41587-021-00926-3
三次元(3D)イメージングは進歩しているものの、大きな3D組織に関して、存在する多くの細胞タイプの形態や構成など、全細胞のプロファイリングを行うことは今なお課題となっている。本論文では、8色の多重スペクトル大規模単一細胞分解能3D(mLSR-3D)イメージング、ならびに並列化とディープラーニングによって組織中の多数の単一細胞のセグメンテーションを行う画像解析ソフトウエアSTAPL-3D(segmentation analysis by parallelization of 3D datasets)を紹介する。我々は、この方法を小児ウィルムス腫瘍に用いて、数百万個の細胞の分子的、空間的、および形態的な特徴を抽出し、その腫瘍の空間–表現型パターン形成を再現した。in situ集団プロファイリングと擬似時間配列の結果、ウィルムス腫瘍には健常胎児腎と比較して極めて無秩序な空間的パターンが見いだされたが、ヒト胎児腎細胞と酷似する細胞プロファイルが認められた。また、空間的埋伏や形態的属性によって固有の特徴を持つと認められる、過去に未発表の腫瘍特異的集団が特定された。今回の結果から、mLSR-3DとSTAPL-3Dを組み合わせて用いることで、ヒト腫瘍の網羅的な細胞マップが得られることが実証された。