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BayesSpaceによるサブスポット分解能での空間トランスクリプトミクス
Nature Biotechnology 39, 11 doi: 10.1038/s41587-021-00935-2
最近の空間的遺伝子発現解析技術により、空間的状況を保持しながらトランスクリプトームのプロファイルを包括的に測定することが可能となった。しかし、既存の分析法では、この技術の分解能の低さが解消されていなかったり、空間的情報が効率的に使用されていなかったりしている。本論文では、空間トランスクリプトームデータの分解能強化とクラスター分析のために空間的隣接領域から得た情報を用いる真のベイズ統計法であるBayesSpaceを紹介する。我々は、空間的・非空間的クラスター化を行う既存の方法に照らしてBayesSpaceを評価し、BayesSpaceによって、脳、黒色腫、浸潤性腺管がん、卵巣腺がんの検体のさまざまな組織内転写プロファイルの識別が改善されることを明らかにした。免疫組織化学的検査とscRNA-seqデータから構築されたin silicoデータセットを用いることにより、BayesSpaceが当初の分解能では検出不可能な組織構造を明らかにし、組織学的分析では捉えられない転写不均一性を特定することが示された。今回の結果は、空間トランスクリプトームデータセットからの生物学的知見の獲得を推進する上で、BayesSpaceが有用であることを示している。