Analysis
T細胞受容体レパートリーのプロファイリング法のベンチマーク評価が大きな系統的バイアスを明らかにする
Nature Biotechnology 39, 2 doi: 10.1038/s41587-020-0656-3
健常時および罹患時のT細胞受容体(TCR)レパートリーをモニタリングすることで、適応免疫応答に関する重要な知見が得られるが、既存のTCR塩基配列解読(TCRseq)法の正確度は明らかでない。本研究で我々は、市販のTCRseq手法および学術的なTCRseq手法9種類[6種類の相補的DNA末端迅速増幅(RACE)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法と3種類のマルチプレックスPCR法]を同じT細胞試料に用いたときの結果を、系統的に比較した。T細胞受容体α(TRA)とT細胞受容体β(TRB)のTCR鎖に関して、正確度および方法内と方法間の再現性に著しい差が認められた。ほとんどの方法は、TRBの多様性よりもTRAの多様性を捕捉する能力の方が低いことが示された。RNA投入量が小さい場合に、得られるレパートリーは非代表的なものであった。5′ RACE-PCR法の結果は、この手法内では一貫性があったが、RNAに基づくマルチプレックスPCR法の結果とは異なっていた。我々は、108の反復から得られたin silicoメタレパートリーを用いることにより、ゲノムDNAに基づく方法1種と固有分子識別子(UMI)によらないRNAに基づく方法2種が、UMIによる方法よりも希少なクローン型の検出感度が高いことを見いだした。ただし、クロノタイプ定量の正確度は、UMIによる方法の方が優れていた。