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COVID-19患者では高血圧がウイルスの排除を遅延させて気道の過剰炎症を増悪させる

Nature Biotechnology 39, 6 doi: 10.1038/s41587-020-00796-1

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、高血圧と心血管疾患が重症化の大きなリスク因子となっている。しかし、その根本的原因や、主要な降圧療法であるアンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)とアンギオテンシン受容体遮断薬(ARB)の効果はいまだ明らかになってない。今回我々は、臨床データ(n = 144)と気道試料の単一細胞塩基配列解読データ(n = 48)をin vitro実験と組み合わせることで、高血圧患者の免疫細胞にはCOVID-19の重症化と相関する明確な炎症性素因があることを確認した。ACEI治療はCOVID-19による過剰炎症の緩和と細胞本来の抗ウイルス応答の強化と関連していたのに対し、ARB治療は上皮–免疫細胞相互作用の増強と関連していた。特にARB治療中の高血圧患者のマクロファージと好中球では、炎症促進性サイトカインCCL3CCL4、ケモカイン受容体CCR1の発現が亢進していた。今回のコホートサイズは限られているため臨床効果を証明することはできないが、我々のデータから、高血圧のあるCOVID-19患者のACEI治療の臨床効果にはさらに研究を進める価値があることが示唆された。

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