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非標準的オープンリーディングフレームはがん細胞の生存に不可欠な機能タンパク質をコードしている
Nature Biotechnology 39, 6 doi: 10.1038/s41587-020-00806-2
ヒトゲノム中には非標準的なオープンリーディングフレーム(ORF)が多数存在することがゲノム解析で予測されているが、それらが生物活性タンパク質をコードしているかは明らかにされていない。本研究では、非標準的ORFのデータセットから選択した553の候補の実験的解析を行った。そのうち57は、ヒトがん細胞株でノックアウトすると生存能が低下した。異所的に発現させると、257はタンパク質が発現した証拠を示し、401は遺伝子発現の変化を誘発した。CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)タイリングと開始コドンの変異誘発から、これらのORFの生物学的作用はRNAを介したものではなく翻訳が必要であることが示された。このうちの1つであるG029442[新たにグリシンリッチ細胞外タンパク質1(glycine-rich extracellular protein-1;GREP1)と命名]は、乳がんで高発現する分泌性タンパク質をコードしており、263系統のがん細胞株でノックアウトすると、乳がん由来細胞株での選択的重要性を示すことが分かった。GREP1発現細胞のセクレトームでは発がん性サイトカインGDF15の存在量が増加しており、GDF15を補充することでGREP1ノックアウトの増殖阻害作用が抑制された。今回の実験は、治療標的となる可能性のある生物活性タンパク質が非標準的ORFから発現する場合があることを示唆している。