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基準試料を用いて単一細胞RNA塩基配列解読法をベンチマーク評価した多施設研究
Nature Biotechnology 39, 9 doi: 10.1038/s41587-020-00748-9
異なる技術や異なる研究室で得られた多様な単一細胞RNA塩基配列解読(scRNA-seq)データセットの比較は、今なお大きな課題である。本研究では、異なるプラットフォームで得られたさまざまなデータタイプの正確な生物学的解釈を行うアルゴリズムの選択に関する手引きの必要性に取り組んだ。特徴のよく知られている2種類の基準細胞試料(乳がん細胞およびB細胞)を個別または混合のいずれかで捉えて用いることにより、各種のscRNA-seqプラットフォームと複数の前処理法、正規化法、バッチ効果補正法を複数の施設で比較した。前処理と正規化は遺伝子検出と細胞分類の変動性の一因となっていたが、細胞の正確な分類ではバッチ効果補正が圧倒的に最重要の因子であった。さらに、最適なバイオインフォマティクス的方法の判定では、scRNA-seqデータセットの特徴(試料と細胞の不均質性、用いたプラットフォームなど)が極めて重要であった。しかし、適切なバイオインフォマティクス的方法を用いると、施設間およびプラットフォーム間の再現性は高かった。以上の知見は、scRNA-seq研究の計画でプラットフォームとソフトウエアの選択を最適化するための実用的な手引きとなる。