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アポトーシスを促進する抗がん治療のための増幅遺伝子座位の直接的標的化
Nature Biotechnology 40, 3 doi: 10.1038/s41587-021-01057-5
遺伝子増幅は広範ながんで発がんを進行させる。増幅されたドライバー遺伝子のタンパク質産物を阻害する薬物は複数開発されてきたが、臨床的効果が薬剤耐性によって阻害されているものが多い。本論文では、三本鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)でDNA損傷応答を活性化させることによってがん関連の遺伝子増幅を標的とする治療戦略を紹介する。TFOは腫瘍でアポトーシスの誘導を推進する一方、増幅のない細胞は低レベルのDNA損傷を処理する。HER2の増幅で生じるがんに着目することにより、HER2を標的とするTFOがコピー数依存的なDNA二本鎖切断(DSB)を誘導し、HER2陽性がん細胞とヒト腫瘍異種移植片で、HER2の細胞機能に依存しない機構を介してp53非依存性のアポトーシスを活性化させることが明らかになった。この戦略は、現在の精密医療に匹敵するin vivo有効性を示し、HER2陽性の乳がんモデルと卵巣がんモデルで薬剤耐性と闘うための現実的な代替手段となる。今回の知見は、ゲノム座位が増幅した腫瘍を標的とする一般的な戦略を提供する。