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工業的パイロットスケールでのガス発酵によるアセトンとイソプロパノールのカーボンネガティブな生産
Nature Biotechnology 40, 3 doi: 10.1038/s41587-021-01195-w
化石資源から生産される多くの工業化学物質の製造は、発酵によって持続可能性を高められる可能性がある。本論文では、工業的に重要な化学物質であるアセトンとイソプロパノールを、工場排気や合成ガスなど、低コストで大量に存在する排ガス原料から生産するカーボンネガティブな発酵経路の開発について記す。我々はまず、コンビナトリアル経路ライブラリー法を用い、独立栄養性の酢酸生産菌Clostridium autoethanogenumの改変に用いる優れた酵素を求めて、既存の工業株コレクションの探索を行った。次に、オミクス解析、動力学モデリング、無細胞プロトタイピングを用いてフラックスを最適化した。最後に、最適化した株をスケールアップし、速度約3 g/L/h、選択性約90%の連続生産を達成した。ライフサイクル解析の結果、生産物の二酸化炭素排出量がマイナスになることが確認された。温室効果ガスを放出する従来の生産工程と異なり、我々の方法は炭素を固定する。以上の結果は、改変された酢酸生産菌が持続可能で高効率、高選択性の化学物質生産を可能にすることを示している。この手法は、幅広い汎用化学物質に向けて容易に改変可能であると期待される。