Article

TdTを標的とするT細胞は正常リンパ球を温存しながら白血病リンパ芽球を死滅させる

Nature Biotechnology 40, 4 doi: 10.1038/s41587-021-01089-x

T細胞受容体(TCR)は、キメラ抗原受容体とは異なり、ヒト白血球抗原(HLA)分子上に提示された細胞内標的を認識することができる。本研究では、HLA-A*02:01で提示された細胞内リンパ系特異的酵素ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TdT)由来のペプチドに特異的なTCRを発現するT細胞が、in vitroと3種類の播種性B-ALLマウスモデルにおいて、T細胞とB細胞に由来する原発性の急性リンパ芽球性白血病(ALL)細胞を特異的に排除することを明らかにした。一方、この処置では、in vitroとヒト化マウスのin vivoにおいて、正常な末梢T細胞レパートリーと末梢B細胞レパートリー、および正常な骨髄細胞が温存された。TdTは、B-ALLとT-ALLの80~94%で均一に高発現しているが、正常なリンパ系細胞の分化過程では一時的にしか発現せず、TdT特異的T細胞のオンターゲット毒性が限定的であるため、格好のがん標的となる。TdTを標的とするTCR改変T細胞は、正常なリンパ球を維持する有望なB-ALLおよびT-ALL免疫療法と考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度