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タンパク質医薬品の製造と経口投与に向けたスピルリナの開発
Nature Biotechnology 40, 6 doi: 10.1038/s41587-022-01249-7
光合成を行う食用のシアノバクテリアArthrospira platensis(スピルリナ)を生理活性物質の製造基盤として利用するにあたっては、遺伝子操作技術が確立されていないことが制約となっていた。本論文では、大規模な室内培養法および下流の加工法を含め、スピルリナで生理活性タンパク質を安定的に高発現させる遺伝子工学的手法を紹介する。外来遺伝子をスピルリナ染色体の目的部位に導入すると、その遺伝子にコードされたタンパク質製剤は総バイオマスの15%にまで達し、経口投与前に精製を必要とせず、冷蔵しなくても安定であり、乾燥スピルリナにカプセル化されると胃を通過するときも保護される。開発途上国の乳児死亡の主な原因であるカンピロバクターを標的とする抗体を発現させたスピルリナをマウスに経口投与すると感染が予防され、第I相臨床試験ではヒトへの投与の安全性が実証された。スピルリナは、食品利用されている宿主の安全性と、可能になった遺伝子操作および高い生産性を持つ微生物的製造基盤とを組み合わせることにより、経口投与型タンパク質医薬品の製造に優れたシステムを提供する。