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組織の単一細胞トランスクリプトームの空間的描写

Nature Biotechnology 40, 8 doi: 10.1038/s41587-022-01233-1

単一細胞RNA塩基配列解読法で可能なのは単一細胞のトランスクリプトームのプロファイリングであって、空間情報は保存されない。逆に、空間トランスクリプトミクスアッセイは組織切片の空間的領域のプロファイルが得られるが、単一細胞レベルの分解能を持たない。今回開発したCellTrekという計算法は、その2種類のデータセットを組み合わせ、同時埋め込みとメトリック学習の手法によって単一細胞の空間的マッピングを行うものである。模擬およびin situハイブリダイゼーションのデータセットを用いてCellTrekのベンチマーク評価を行ったところ、その正確度および確実性が実証された。次に、マウス脳および腎臓の既存のデータセットにCellTrekを応用すると、さまざまな細胞型および細胞状態の構造パターンが見いだされることが示された。非浸潤性乳管がん組織2点で単一細胞RNA塩基配列解読および空間トランスクリプトミクス実験を実施してCellTrekを用いると、異なる乳管に限定される腫瘍サブクローン、および腫瘍領域に隣接する特異的なT細胞状態が発見された。今回のデータは、CellTrekがさまざまな種類の組織に存在する単一細胞を正確にマッピングし、その空間的構造を明らかにできることを示している。

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