Review Article

機械学習によるペプチドの質量スペクトルライブラリーの予測

Nature Biotechnology 41, 1 doi: 10.1038/s41587-022-01424-w

複雑な質量スペクトルデータからペプチドを同定する機械学習法の最近の発達は、プロテオミクスにおける大きなブレークスルーであると言ってよい。検索エンジンや実験で得られるスペクトルライブラリーなど、ペプチド同定のための従来の方法は、アミノ酸配列からのペプチド断片化スペクトルの予測を可能にするディープラーニングモデルに取って代わられつつある。再帰型ニューラルネットワークや畳み込みニューラルネットワークをはじめとするそうした新たな手法は、実験で得られたライブラリーではなく、予測されたin silicoのスペクトルライブラリーを用いることにより、プロテオミクスデータ解析の感度と特異性を向上させる。機械学習は、免疫ペプチドミクスやプロテオゲノミクスなどの大きな検索空間を対象とする応用を刺激している。この分野の現在の課題には、翻訳後修飾を受けたペプチドや架橋されたペプチド対のスペクトル予測がある。機械学習に基づくスペクトル予測が、さまざまなペプチドクラスや測定条件を対象として、検索エンジンや、スペクトルを軸とするデータ非依存性取得ワークフローに広がることで、今後の数年間はプロテオミクス応用の感度とダイナミックレンジが向上し続けるものと考えられる。

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