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SARS-CoV-2とヒトの網羅的なタンパク質間インタラクトームがCOVID-19の病理生物学的性質と潜在的な宿主治療標的を明らかにする

Nature Biotechnology 41, 1 doi: 10.1038/s41587-022-01474-0

ウイルスと宿主のタンパク質間相互作用の研究は、ウイルス感染の治療法の発見を加速させることができる。我々は、ハイスループットの酵母ツーハイブリッド実験および質量分析法を用いて、信頼性の高い739組の2成分および共複合体相互作用からなる重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)とヒトの網羅的なタンパク質間インタラクトームネットワークを作成し、SARS-CoV-2の既知の宿主因子218個を確認するとともに、新規因子361個を発見した。得られた結果は、公開されているデータセットの間の相互作用パートナー、および新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者検体の差次的発現遺伝子に関して、最高の重複を示している。ウイルスタンパク質ORF3aとヒト転写因子ZNF579の間に相互作用が見いだされ、宿主の転写に対するウイルスの直接的な影響が示された。また、ネットワークに基づいて2900個以上のFDA承認薬や治験薬のスクリーニングを行い、SARS-CoV-2の宿主因子に対するネットワーク近接性の大きな23個を見いだした。その1つであるカルベジロールは、電子健康記録の解析でCOVID-19患者への臨床効果が明らかにされ、SARS-CoV-2に感染したヒト肺細胞系列での抗ウイルス特性が認められた。今回の研究は、ヒトとウイルスの相互作用の理解に対するネットワークシステム生物学の価値を示すとともに、COVID-19治療薬に関する今後の研究にヒット化合物をもたらした。

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