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自動化と機械学習によるハイスループットの微生物カルチュロミクス
Nature Biotechnology 41, 10 doi: 10.1038/s41587-023-01674-2
マイクロバイオーム研究では、詳細な実験と機構的研究に今なお細菌の純粋培養が不可欠であるが、複雑な微生物生態系から個々の細菌を分離する従来の方法は労力がかかり、大規模化が難しく、表現型と遺伝子型の統合が不十分である。本論文では、オンデマンドで迅速に分離株を得るためのオープンソースのハイスループットなロボット型株分離プラットフォームを紹介する。コロニーの形態とゲノムデータを利用し、分離される微生物の多様性を最大化して特定の属に的を絞った選択を可能にする機械学習法を開発した。このプラットフォームをヒト20人の糞便サンプルに応用すると、存在量の多い分類群全体の80%以上に相当する合計2万6997分離株を含む個別化腸内マイクロバイオームのバイオバンクが得られた。視覚的に捉えた10万以上のコロニーの空間解析では、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、コリオバクテリウム科(Coriobacteriaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)の間に重要な微生物相互作用を示唆する共増殖パターンが見いだされた。今回のバイオバンクに由来する1197の高品質ゲノムを比較解析した結果、興味深い個人内・個人間の系統進化、選択、遺伝子水平伝播が明らかになった。このカルチュロミクスの枠組みは、多くの新しいマイクロバイオーム研究に関して、高分解能のゲノミクスデータを用いたイメージングに基づく表現型の収集と定量的解析を体系化する新しい研究の取り組みを後押しすることが期待される。