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スペクトルテンプレートマッチングによって単一細胞データのトポロジカルシグナルの推定、選別、増強を行うscPrisma
Nature Biotechnology 41, 11 doi: 10.1038/s41587-023-01663-5
単一細胞RNA塩基配列解読法は、細胞の時空間的状況を明らかにする手段となっている。この課題が容易でないのは、細胞が、相互に干渉している可能性のある複数の生物学的シグナルを同時にコードしているためである。本論文では、トポロジカルな事前情報を使用して周期シグナルや線形シグナルといった単一細胞データのさまざまな種類の生物学的過程を分離、強化、選別するコンピューターによるスペクトル分析法、scPrismaを提案する。我々は、HeLa細胞の細胞周期、肝小葉の概日リズムと空間的領域特異性、クラミドモナス(Chlamydomonas)の日周期性、脳視交叉上核の概日リズムの解析にscPrismaを応用した。scPrismaを用いることで、混合細胞集団を細胞タイプなどの明確な特徴によって識別し、概日リズムなど、事前に定義された生物学的シグナルに特有の調節ネットワークや細胞間相互作用を見いだすことができる。事前情報の取り込み、トポロジー的に情報価値のある遺伝子の推定、追加的で多様なテンプレートや系への一般化に関して、scPrismaの柔軟性が示された。scPrismaは、シグナル分析用の独立型ワークフローとして、また下流の単一細胞解析の前工程として用いることができる。