Article

遺伝子改変ヒト肝細胞オルガノイドが脂肪症のCRISPRに基づく標的探索と薬物スクリーニングを可能にする

Nature Biotechnology 41, 11 doi: 10.1038/s41587-023-01680-4

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)には登録されている薬剤が存在しないが、これは標的探索と化合物スクリーニングのためのヒトに有効なモデルが不足していることが一因である。今回我々は、ヒト胎児肝細胞オルガノイドを用い、NAFLDの第一段階である脂肪症に関して、遊離脂肪酸の負荷、個人間の遺伝的変動(PNPLA3 I148M)、単一遺伝子性の脂質異常(APOBMTTPの変異)という3つの異なるトリガーを表すモデルを作製した。薬物候補のスクリーニングによって、脂肪症の解消に有効な化合物が発見された。有効な薬物の機構に関する評価から、脂質新生の抑制が収斂的な分子経路であることが明らかになった。我々は、APOB−/−およびMTTP−/−のオルガノイドを用いて脂肪症の調節因子と推定上の標的を見いだすCRISPRスクリーニングプラットフォームFatTracerを紹介する。脂質代謝やNAFLDリスクに関与する35遺伝子を標的とするスクリーニングから、FADS2(脂肪酸デサチュラーゼ2)が脂肪肝の重要な決定因子として浮上した。FADS2発現の増強は多価不飽和脂肪酸の量を増加させ、ひいてはそれが脂質新生を抑制する。今回のオルガノイドモデルは、脂肪症の病因と薬物標的の研究を促進する。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度