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エンハンサー活性とトランスクリプトーム履歴の後ろ向き解析

Nature Biotechnology 41, 11 doi: 10.1038/s41587-023-01683-1

発生や疾病における細胞状態の変化は遺伝子調節ネットワークによって制御されているが、その動態をリアルタイムで追跡することは困難である。本研究では、遺伝子の転写に影響を与えずS期に伝えられる細菌のメチル化標識で活性遺伝子やエンハンサーを標識する、誘導発現型のDCM–RNAポリメラーゼサブユニットb融合タンパク質を用いた。このDCM–RNAポリメラーゼ融合タンパク質は、転写される遺伝子や活性エンハンサーをタグ付けし、その後の発生や分化の段階で調べることを可能にする。我々は、このDCMタイムマシーン(DCM-TM)技術を腸のホメオスタシス研究に応用することにより、腸細胞の分化の過程でエンハンサーと近傍遺伝子が迅速かつ協調的に活性化されることを示した。腸幹細胞(ISC)の分化における吸収性系統と分泌性系統の決定に関する新しい知見が得られ、ISCがISCであり続けたり分化関連遺伝子の将来的な発現を規定したりするのに必要な特有のクロマチン景観を保持していることが明らかになった。DCM-TMは、細胞状態の追跡に広く応用することができ、細胞状態変化の基盤となる調節ネットワークに関する新たな知見をもたらす。

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