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単一細胞トランスクリプトームアトラスが導く急性骨髄性白血病治療用CAR T細胞の開発
Nature Biotechnology 41, 11 doi: 10.1038/s41587-023-01684-0
キメラ抗原受容体T細胞(CAR T細胞)は、B細胞悪性腫瘍の患者に対する強力な治療選択肢として登場してきたが、急性骨髄性白血病(AML)の治療では、安全な標的が存在しないために成果が上がっていない。今回我々は、AML患者15人から得た50万個以上の単一細胞と健常者9人の組織の一般に公開されているRNA塩基配列解読データアトラスを活用し、悪性細胞では発現しているがT細胞を含む健常細胞では発現していない標的抗原を予測した。この高分解能の単一細胞発現手法を利用することで、コロニー刺激因子1受容体とCD86がAMLにおけるCAR T細胞治療の標的となることをコンピューターにより特定した。こうした樹立されたCAR T細胞の機能を検証したところ、細胞株由来とヒト由来のAMLモデルでのin vitroおよびin vivoの有効性がロバストなものであり、関連する健常ヒト組織に対するオフターゲットの毒性が極めて弱いことが示された。以上の結果は、臨床開発の継続を支持する強力な根拠となる。