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改変型エフェクターと内因性エフェクターによる精密なRNA塩基編集

Nature Biotechnology 41, 11 doi: 10.1038/s41587-023-01927-0

RNA塩基編集とは、作られたままのRNA分子が持つ遺伝情報を書き換えることであり、内因性免疫機構の回避やタンパク質の機能調節など、さまざまな働きを担う。その実行のために、核酸塩基の変換を触媒する酵素がヒト細胞で発見されている。この自然の過程を利用することで、標的転写物のあらゆる塩基を操作して書き直すことができる可能性がある。DNA塩基編集とは対照的に、RNAに導入される類似の変化は永続的でも遺伝性でもなく、可逆的で投与可能な効果をもたらすため、さまざまな治療的応用が期待される。現在行われているRNA塩基編集にはアデノシンとシチジンの脱アミノ化があり、それぞれイノシンとウリジンに変換される。本総説では、現在の部位特異的RNA塩基編集戦略を概説し、編集効率、精度、コドン標的範囲、疾患関連組織へのin vivo送達を改善する最近の成果に着目する。改変型の編集エフェクターに加えて、内因性のADAR(adenosine deaminases acting on RNA)酵素を利用する戦略にも焦点を合わせ、基礎研究用、および治療モダリティーとしてのこうしたツールの応用に関する制約や将来的見通しについて検討する。この分野では、おそらくは十分に解明された遺伝病を対象に、初のRNA塩基編集薬が間もなく現実のものとなることが期待される。しかし、この技術は、シグナル伝達の刺激や代謝、その他の臨床的に意味のある過程を安全かつ投与可能な方法で調節するために特有の能力が利用される最適の場を切り開くことが、長期的な課題になると考えられる。

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