Article

プロテオームの高度な配列解読によるヒトのバリアントとアイソフォームの網羅的な検出

Nature Biotechnology 41, 12 doi: 10.1038/s41587-023-01714-x

通常のショットガンプロテオミクス実験は、1試料から約1万のヒトタンパク質を検出する。しかし、個々のタンパク質は、全アミノ酸のごく一部に相当するペプチド配列によって同定されることが一般的である。そのため、通常のショットガン実験では、タンパク質の各種のバリアントやアイソフォームを識別することができない。従って、タンパク質のアイソフォームを網羅的に検出するには、プロテオームの配列解読を深化させることが必要である。今回、6種類のヒト細胞株、6種類のプロテアーゼ、高度な分画、および3種類のタンデム質量分析フラグメンテーション法を用いることにより、1万7717タンパク質群の100万のユニークペプチドが見いだされ、配列カバー率の中央値は約80%となった。RNA発現データとの直接比較により、大多数の非同義バリアントが翻訳されている証拠が得られた。また、検出されないバリアントは、変異が誘発するタンパク質の不安定性によって生じている可能性も推測された。さらに、構成的スプライシングと選択的スプライシングでは、エクソン–エクソン接合部ペプチドの検出率が同等であることが明らかになった。今回のデータセットはプロテオフォーム探索のための情報資源となるものであり、フレームが保存された選択的スプライシングアイソフォームの大多数が翻訳されていることを示す直接的な証拠をもたらした。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度