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単一細胞マルチオーム速度はエピゲノム・トランスクリプトーム相互作用をモデル化して細胞運命の予測を改善する
Nature Biotechnology 41, 3 doi: 10.1038/s41587-022-01476-y
同一細胞内の複数の分子モダリティーを解析した単一細胞マルチオームデータセットは、エピゲノムとトランスクリプトームとの時間的関係を解明する機会を提供する。この可能性を実現するため、我々はMultiVeloを開発した。これは、RNA速度の枠組みを拡大してエピゲノムデータを組み込んだ遺伝子発現の微分方程式モデルである。MultiVeloは、確率的潜在変数モデルを用いてクロマチン接近可能性および遺伝子発現の切り換え時間および速度のパラメーターを推定し、RNAのみによる速度推定と比較して細胞運命予測の正確度を高める。脳、皮膚、および血球の単一細胞マルチオームデータセットに応用したところ、クロマチンが閉じるのが転写終了の前か後かで区別される2種類の遺伝子群が明らかになった。また、エピゲノムとトランスクリトームが連動する2種類および連動しない2種類という4種類の細胞状態も発見された。最後に、転写因子の発現と結合部位の接近可能性とのタイムラグ、および疾患関連のSNPの接近可能性と関連遺伝子の発現とのタイムラグが見いだされた。MultiVeloは、PyPI、BiocondaおよびGitHub(https://github.com/welch-lab/MultiVelo)で入手可能である。