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in situのポリアデニル化による全トランスクリプトームの空間的マッピング
Nature Biotechnology 41, 4 doi: 10.1038/s41587-022-01517-6
空間トランスクリプトミクスは空間的な遺伝子発現状況を明らかにするが、従来法はポリアデニル化された(ポリA尾部を持つ)RNA転写物の解析に限られている。本研究では、in situの酵素的なRNAポリアデニル化により、あらゆる種類のRNAが検出できるようになり、塩基配列解読に基づく空間トランスクリプトミクスの範囲が全トランスクリプトームに拡張されることを示した。我々のSTRS法(spatial total RNA-sequencing)は、コードRNA、非コードRNA、およびウイルスRNAを捉えられることが実証された。我々は、STRSを骨格筋再生およびウイルス性心筋炎の研究に応用した。解析すると、非コードRNAの空間的発現パターンがほぼ細胞レベルの分解能で示され、骨格筋再生における非コードRNA転写物の空間限定的な発現が見いだされ、さらに局所的なウイルスRNA量に関連する宿主の転写応答も明らかにされた。STRSは、広く用いられている10x ゲノミクス社の空間的トータルRNA塩基配列解読プロトコルVisiumに1ステップ加えるだけで済むため、空間的遺伝子調節および生物学に関する新たな知見を得るために容易に導入可能と考えられる。