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MINSTEDナノ顕微鏡の位置測定がオングストロームレベルに到達
Nature Biotechnology 41, 4 doi: 10.1038/s41587-022-01519-4
超解像技術はナノメートルレベルの位置測定精度を達成している。今回我々は、室温で蛍光色素分子の位置を全光学的にオングストロームの精度で測定したことを報告する。我々が立脚したのは、誘導放出抑制(Stimulated Emission Depletion;STED)法によるドーナツ型ビームの低強度の中心部で蛍光色素分子を取り囲みながらドーナツ光の絶対出力を連続的に強化することで精度が高まる、というMINSTEDナノ顕微鏡の概念である。STEDビームをブルーシフト(青方偏移)させ、蛍光色素分子をオンオフ切り替えによって分離することで、DNA鎖に結合した個々の蛍光色素分子の位置がσ = 4.7 Åで測定された。これは蛍光色素分子の大きさの数分の1に相当し、検出光子数はわずか2000個であった。1桁ナノメートルの分解能を持つMINSTED蛍光ナノ顕微鏡が、一過性のDNAハイブリダイゼーションで標識した哺乳類細胞の核膜孔複合体および核ラミン分布の画像化で例証された。今回の実験では検出光子1万個の推定でσ = 2.3 Åという位置測定精度が得られたことから、MINSTEDは細胞内の巨大分子複合体の研究に新たな応用の場を開くことが期待される。