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免疫賦活性の副生成物を生じずにmRNAを合成する改変T7 RNAポリメラーゼ
Nature Biotechnology 41, 4 doi: 10.1038/s41587-022-01525-6
in vitro転写合成(IVT)は、DNAを鋳型としてメッセンジャーRNA(mRNA)などの長鎖RNA転写物を合成する方法である。研究および商業的応用に関して、mRNAのIVTは一般にバクテリオファージT7の RNAポリメラーゼ(T7 RNAP)を用いて行われることが多いが、それは完全長RNA転写物が高い忠実度で得られるためである。しかし、T7 RNAPは、タンパク質発現に影響し得る二本鎖RNAなど、免疫賦活性の副生成物を生じる場合もある。安全で有効なmRNA薬を得るには、そうした副生成物に逆相高速液体クロマトグラフィーなどの方法による複雑な精製処理が必要となる。下流での精製処理の必要性を最小化するために、我々は、IVT時に生じる免疫賦活性の副生成物の量が野生型のT7 RNAPを大幅に下回る二重変異体を、コンピューターで合理的に設計した。この変異体により、野生型T7 RNAP と比較してmRNAの効力が同等で、免疫賦活性の成分が少なく、製造時間が短い単純化された製造法が実現された。本論文では、この改良型T7 RNAP変異体のコンピューターによる設計および開発について発表する。