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がん免疫療法のためのペプチド–MHC制限抗体の簡便な転用
Nature Biotechnology 41, 7 doi: 10.1038/s41587-022-01567-w
主要組織適合複合体(MHC)に提示された腫瘍抗原をT細胞受容体(TCR)に類似した方法で認識するモノクローナル抗体は、がん免疫療法として大きな可能性を秘めている。しかし、「TCR模倣」抗体は、αβ-TCRの構造的に絶妙なペプチド–MHC制限が抗体で進化していないため、分離が困難である。本論文では、通常のαβ-TCRの場合と構造的に類似した方法でペプチド–MHCに結合する抗体をまず選択してから再設計することにより、ペプチド特異性が高い「MHC制限」抗体を迅速に分離する戦略を紹介する。TCR模倣抗体の相補性決定領域ループのペプチド相互作用残基に注目して構造に基づくライブラリーを構築し、マウスとヒト両方の腫瘍抗原に対するMHC制限抗体を迅速に得た。このMHC制限抗体は、IgG、二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)、キメラ抗原受容体T(CAR T)としてフォーマット化すると、標的細胞を特異的に殺傷した。選択されたあるpMHC制限抗体の結晶解析では、高度にペプチド特異的な認識が明らかになり、この設計戦略の有効性が確認された。この手法は腫瘍抗原に特異的な抗体を数週間で得ることができ、迅速な臨床応用を実現する可能性がある。