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個々のシナプスの液滴式トランスクリプトームプロファイリング

Nature Biotechnology 41, 9 doi: 10.1038/s41587-022-01635-1

シナプスは、複雑な神経回路の中でニューロン間のシグナル伝達が行われる極めて重要な構造であり、形態的にも電気生理学的にもかなりの不均質性が見られる。現在のところ、個々のシナプスの分子的な不均質性を明らかにするハイスループットな方法は存在しない。本研究では、主としてシナプトソームからなる個々の神経突起のトランスクリプトーム解析を行う液滴式の単一細胞全RNA塩基配列解読プラットフォームMATQ-Drop(Multiple-Annealing and Tailing-based Quantitative scRNA-seq in Droplets)を開発した。マウスでもヒトでも、脳試料のシナプトソームのトランスクリプトーム(シナプトーム)のプロファイリングでは、ニューロンのサブタイプと関連するシナプトソームのサブクラスターが見いだされ、シナプス内で生じる転写物スプライシングの景観が明らかにされた。アルツハイマー病(AD)マウスモデルのシナプトパチーにシナプトームプロファイリングを応用すると、単一核トランスクリプトームプロファイリングでは検出できないAD関連のシナプス遺伝子発現の変化が発見された。以上の結果から、このプラットフォームは、単一シナプトソームのトランスクリプトームのハイスループットなプロファイリングを行い、神経科学分野の将来的な発見を促進するツールとなることが示された。

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