Article
細胞内での薬物のクロマチン結合のプロファイリングを行うChem-map
Nature Biotechnology 41, 9 doi: 10.1038/s41587-022-01636-0
薬物と標的の結合の特徴を明らかにすることは、小分子が細胞の機能にどう影響するかを理解する上で極めて重要である。本論文では、小分子が導くトランスポザーゼTn5のタグメンテ-ションを用い、DNAまたはクロマチン関連タンパク質と相互作用する小分子のin situマッピングを行うChem-mapを紹介する。Chem-mapは、3種類の薬物結合様式(クロマチンタンパク質を標的とする分子、DNAの二次構造を標的とする分子、DNAにインターカレーションする分子)に関して実証を行った。我々は、BETブロモドメインタンパク質に結合する阻害物質JQ1のマッピングを行い、DNAのグアニン四重鎖構造に結合する分子であるPDSとPhenDC3の相互作用マップを得た。また、広く使用されている抗がん薬ドキソルビシンの結合部位をヒト白血病細胞で特定し、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬ツシジノスタットに曝露されたヒト細胞でドキソルビシンのChem-mapを用いて、この併用療法の潜在的な臨床有益性を示した。DNAやクロマチンタンパク質と小分子の相互作用をChem-mapでin situマッピングして得られる知見は、ゲノムやクロマチンの機能と治療介入に関する理解を増進すると考えられる。