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DNA結合変性タンパク質のゲノム規模の機能的構成を明らかにするDisP-seq
Nature Biotechnology 42, 1 doi: 10.1038/s41587-023-01737-4
DNA結合タンパク質中の天然変性領域(IDR)は遺伝子の調節に影響することが知られているが、その分布と、ゲノム規模の調節プログラムにおける協調的機能はほとんど解明されていない。本論文では、ビオチン標識イソキサゾールによる沈降と次世代塩基配列解読法を組み合わせることで、内在性のDNA結合変性タンパク質群をゲノム規模で同時にマッピングできる抗体非依存性の化学的沈降法であるDisP-seq(disordered protein precipitation followed by DNA sequencing)を紹介する。DisP-seqのプロファイルを構成する数千本のピークは、多様なクロマチン状態に関連し、変性領域を有する転写因子(TF)が多い。またこれらのピークは、変性タンパク質が局所的に集中し、調節能力と関連するヒストン修飾の多様な組み合わせを持つ、大きな系譜特異的クラスターをなすことが多い。DisP-seqを用いてがん細胞を解析した結果、長距離相互作用によるTFのがん遺伝子依存性の隔離や、ユーイング肉腫における発がん刺激消失時の分化経路の再活性化など、変性タンパク質関連のアイランドが変性TFの結合と機能を制御するIDR依存性機構を実現する仕組みが明らかになった。