Technical Report
集団遺伝学:場所に基づく集団構造を視覚化するための推定有効移住サーフェス
Nature Genetics 48, 1 doi: 10.1038/ng.3464
遺伝学的なデータは往々にして「距離による隔離(isolation by distance)」におおむね一致するパターンを示す。距離による隔離とは、集団間の地理的距離が大きいほどその遺伝学的類似性が小さくなる現象である。生息場所内に地理的な不均一性が存在すると、遺伝学的類似性の消失は、特定の地域において、それ以外の地域よりも迅速に起こる可能性がある。例えば、遺伝子流動に対する障壁が存在すると、近傍集団間の差異化が加速すると考えられる。今回、「effective migration(有効移住)」の概念を用いて、遺伝学的特性と地理的特性との関係をモデル化することを試みた。このパラダイムにおいて、有効移住は、遺伝学的類似性が急速に失われる領域では低い。生息場所内の有効移住の差異を、地理的な指標を付けた遺伝学的データから図示する方法を提案する。この方法は集団遺伝学的モデルを用いて、有効移住率と、予想される遺伝的差異とを関連付けるものである。今回、ゾウ、ヒト、シロイヌナズナArabidopsis thalianaの集団におけるシミュレーションから得られたデータを用いて、本法の有望性と限界を例証した。このような視覚化によって、遺伝的多様性の概要に基づく既存の方法では識別が困難な、集団構造の場所に基づく特性の重要性を明らかにすることができた。