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COVID-19:インターフェロンやウイルスは、完全長のSARS-CoV-2受容体を誘導するのではなく、新しい短縮型ACE2アイソフォームを誘導する
Nature Genetics 52, 12 doi: 10.1038/s41588-020-00731-9
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こす重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、標的細胞への侵入にアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)を利用する。ACE2はインターフェロン誘導遺伝子(ISG)であると提唱されている。従って、インターフェロンに誘導されるACE2の発現レベルの変動は、COVID-19の感受性あるいはその転帰に重要である可能性がある。本論文では、ACE2の新しい短縮型アイソフォーム(異なる開始コドンを使うのでACE2とは転写が独立している)を発見し、deltaACE2(dACE2)と名付けたことを報告する。我々は、ACE2ではなくdACE2が、ISGであることを明らかにした。がんゲノムアトラスでは、dACE2の発現は、気道、消化管、尿生殖路の扁平上皮腫瘍で高かった。dACE2は、アミノ末端の356アミノ酸を欠損しているので、in vitroでSARS-CoV-2スパイクタンパク質に結合せず、カルボキシペプチダーゼとして機能しなかった。我々の結果は、治療、炎症性の腫瘍微小環境、あるいはウイルスの同時感染によって生じる高レベルのIFN条件下においては、dACE2がISG型で誘導されるので、SARS-CoV-2の細胞侵入が増えたり、感染が促進されたりする可能性は低いことを示唆している。