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COVID-19:内在性レトロエレメントを利用する非機能性ACE2の組織特異的でインターフェロン誘導性の発現
Nature Genetics 52, 12 doi: 10.1038/s41588-020-00732-8
アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の侵入受容体であり、いくつかの生理学的過程の調節因子である。ACE2はインターフェロン(IFN)誘導性であることが最近提唱されているため、SARS-CoV-2がこの現象を利用してウイルス拡散を促進することが示唆され、新型コロナウイルス感染症のIFN治療の有効性に疑問が投げ掛けられた。今回我々は、イントロン中のレトロエレメントをプロモーターや選択的エキソンとして用いることで生成されたACE2の新しいアイソフォームを報告する。これは、最近構築されたde novo転写産物のアセンブリーを用いることで達成されたもので、このアセンブリーには、これまでに注釈付けされていない転写産物が取り込まれている。このMIRb-ACE2と名付けた新しい転写産物は、気道消化管や胃腸管にわたって特異的な発現パターンを示し、IFN刺激に対して高い反応性を示した。対照的に、カノニカルなACE2の発現は、IFN刺激に反応しない。また、MIRb-ACE2の翻訳産物は短縮型で不安定な型のACE2であり、SARS-CoV-2への結合に必要なドメインを欠くため、ウイルス感染に寄与、またはウイルス感染を増強する可能性は低いと考えられる。