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神経膠腫:多様な形態を示す神経膠腫の単一細胞レベルでの解析から、細胞の可塑性と環境ストレス応答のエピジェネティックな調節因子を突き止める
Nature Genetics 53, 10 doi: 10.1038/s41588-021-00926-8
神経膠腫に見られる腫瘍内の不均一性は、厳しい微小環境への適応を可能にするとともに、治療抵抗性にも関与している。我々は腫瘍内の不均一性の起源を捉えるために、11人の成人患者のIDH変異型あるいはIDH野生型の神経膠腫において、914の単一細胞DNAメチローム、5万5284の単一細胞トランスクリプトーム、細胞集団としてのマルチオミクスプロファイルの統合解析を行った。局所的なDNAメチル化の乱れは、細胞間のDNAメチル化の差異と関連しており、アグレッシブな腫瘍ほど多く見られ、転写の破壊に結び付けられ、環境ストレス応答の過程で変化することが分かった。in vitroでの低酸素や放射線照射によるストレス下の神経膠腫細胞は、局所的なDNAメチル化の乱れが増加していて、細胞状態の転換が見られた。遺伝的な不安定性とエピジェネティックな不安定性の間には正の関連があることが明らかになり、これは長期間にわたって収集された細胞集団でのDNAメチル化データで裏付けられた。疾患進行の加速と繰り返し選択されたDNAメチル化の変更を伴うDNAメチル化の乱れの増加は、環境ストレス応答経路に豊富に見られた。我々の研究は、適応ストレス応答がエピジェネティックに促進される過程を示していて、治療転帰にはエピジェネティックな不均一性が関与することを明らかにしている。