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COVID-19:スペインにおけるCOVID-19流行の第一波は、流行初期に持ち込まれた支配的なウイルス株の急速な拡散に関連していた
Nature Genetics 53, 10 doi: 10.1038/s41588-021-00936-6
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)は、2020年以来、世界中で激甚な影響を及ぼしている。その第一波の中で、スペインはヨーロッパでこの感染症の発生率が最も高かった国の1つであった。流行の発生や推移を監視・研究するコンソーシアムの一員として、我々は主にロックダウン措置前にCOVID-19と診断された2170人の患者から採取した検体の塩基配列を決定した。その結果、複数の国々からスペインに持ち込まれた少なくとも500件の感染例が確認され、おそらくスーパースプレッディング事例によって拡散したと考えられる2つの支配的なスペイン流行クレード(Spanish epidemic clade;SEC)が流行初期に出現したことが明らかになった。どちらのSECもアジアにおける重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)初期変異株とよく似ており、スペイン全土に広く拡散していた。両SECの実効再生産数は公衆衛生上の介入により大幅に減少し(Re < 1)、2020年の夏には新しい変異株に置き換わったと推測された。すなわち、スペインにおけるSARS-CoV-2の初期の遺伝学的構成は、他のヨーロッパ諸国のそれとは著しく異なることが実証された。また、最も広く流行したウイルス株も含め、ウイルスの拡散を抑制するためにはロックダウン措置が有効であることを裏付ける証拠が得られた。