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食道扁平上皮がん:発生頻度が異なる8か国における食道扁平上皮がんの変異シグネチャー
Nature Genetics 53, 11 doi: 10.1038/s41588-021-00928-6
食道扁平上皮がん(ESCC)の発生頻度には、既知の生活様式や環境リスク要因の違いでは十分に説明しきれない大きな地域間でのばらつきがあり、原因となる未知の外因性曝露の可能性が推測されている。本論文では、変異シグネチャー解析とがん疫学の研究分野を組み合わせて、発生頻度が異なる8か国から得た552症例のESCC全ゲノムを解析した。変異プロファイルは、調べた全ての国で類似していた。特定の変異シグネチャーとESCCリスク要因との関連は、喫煙、飲酒、アヘン、生殖細胞系列バリアントで見つかり、変異負荷に影響を及ぼしていた。ESCC発生頻度の差異を説明できる外因性曝露を示す変異シグネチャーの証拠は明らかではなかった。APOBEC(Apolipoprotein B mRNA-editing enzyme, catalytic polypeptide-like)関連の変異シグネチャーである一塩基置換(SBS)2およびSBS13は、それぞれ88%および91%の症例に見られ、平均して変異負荷の25%を占めていた。このことは、APOBECの活性化がESCCの発生において重要な役割を果たしていることを示している。