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脳腸相関:過敏性腸症候群患者5万3400人のゲノムワイド解析から、気分障害や不安障害と共通する遺伝学的経路が明らかになる
Nature Genetics 53, 11 doi: 10.1038/s41588-021-00950-8
過敏性腸症候群(IBS)は、脳腸相関の乱れに起因する。感受性遺伝子を特定することで、その根底にある病態生理学的機構が明らかになる可能性がある。今回我々は、英国バイオバンクの登録者に対して消化器の健康調査を考案・実施することでIBS症例を特定し、それらの症例とそれとは独立したコホートとを組み合わせて解析に用いた。我々は、5万3400例の症例と43万3201例の対照でゲノムワイド関連解析を行い、有意な関連の再現解析を23andMeパネル(症例20万5252例、対照138万4055例)に対して行った。その結果、IBSに対する6つの遺伝的感受性座位が特定および確認された。得られた遺伝子には、NCAM1、CADM2、PHF2/FAM120A、DOCK9、CKAP2/TPTE2P3、BAG6が含まれていた。この最初の4遺伝子は、気分障害や不安障害と関連するか、神経系で発現するか、あるいはその両方である。このことを反映して、IBSのリスクと不安、神経症傾向、うつ病との間にそれぞれゲノム規模で強い相関が見つかった(rg > 0.5)。追加の解析では、この相関は、例えば不安障害が腹部症状を引き起こすといったことではなく、病因となる経路が共通であることに起因することが示唆された。IBSの根底にある脳腸相関の変化についての理解を深めるためには、関与する機構をさらに調べる必要がある。