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エピジェネティクス:PRC2とエンハンサー機能の同時破壊がヒト後脳神経幹細胞におけるヒストンH3.3-K27M発がん活性の根底にある
Nature Genetics 53, 8 doi: 10.1038/s41588-021-00897-w
ヒストンH3タンパク質をコードする遺伝子においてp.Lys27Met置換(H3-K27M)を生じさせるドライバー変異は、小児正中脳腫瘍で頻繁に見られる。しかし、H3-K27Mが腫瘍イニシエーションを引き起こす正確な機構については分かっていない。今回我々は、ヒト後脳の神経幹細胞を用いて、相当する発生状況でのエピゲノム全体像に対するH3.3-K27Mの影響をモデル化した。エピトープでタグ付けしたヒストンH3.3のゲノム規模のマッピングから、野生型とK27M変異型はどちらも既存の活性型エンハンサーとプロモーターに豊富に取り込まれるが、ポリコーム抑制複合体2(PRC2)結合領域にはあまり取り込まれないことが明らかになった。H3.3-K27Mは、活性型エンハンサーにおいて、H3K27acの局所的な喪失や、クロマチン接近性の低下、近傍の神経発生遺伝子の転写発現低下を引き起こした。さらに、PRC2標的遺伝子のサブセットにおけるH3.3-K27Mの集積は、PRC2とPRC1の結合増加と、PRC2阻害剤により部分的に解除可能な転写抑制の増強につながった。我々の研究は、H3.3-K27Mはde novoの転写回路を作り出すのではなく、PRC2とエンハンサーの機能を破壊することにより、腫瘍開始細胞を既存の未成熟なエピゲノム状態に固定して、腫瘍発生を促進することを示唆している。